木曽 友紀子
法学修士(LL.M.)
LL.M.プログラムの卒業生を代表して、ここでご挨拶できることを光栄に思います。私が修士課程を修了したのは昨年の6月でしたので、卒業式の招待状を受け取ったときにTUJでの経験を思い起こす時間が必要でしたが、このスピーチを準備しながら、たくさんの素晴らしい思い出がよみがえってきました。テンプルでの日々はとても大変でしたが、同時に刺激的な時間でもありました。ここにいる学生のみなさんと同じように、この歴史あるテンプル大学の卒業生の一人となれたことを大変誇らしく思います。
私は、2010年5月に、LL.M.プログラムに入学しました。当時勤めていた日本の商社の法務担当として、私は世界中の取引先との交渉に携わっていました。さらに、日常的に米英の弁護士とも業務を行っていたのですが、彼らの国の法律の基礎概念をよく理解しないまま、法的な問題を話し合わなければなりませんでした。私は日本語で日本の法律しか学んでおらず、その話し合いについていけなかったことを悔しく思っていました。それで、国際的な分野で法律の専門家としてやっていくために、TUJに入学することを決めたのです。LL.M.プログラムのほとんどの授業は夜間に開講されていたため、働き続けながら多くの知識とこの名誉ある学位を取得できるテンプルは、最適の選択でした。
学び始めてすぐ、このコースは想像よりはるかに厳しく、やりがいがあるものだと悟りました。私のようなネイティブスピーカーでない者は、英文テキストの読解にとても時間がかかります。この大量のリーディングの宿題に加えて、私が苦労したのは、日本の法律の基礎となる成文法とは異なる、慣習法の考え方を理解することでした。慣習法では、まず過去の判例を分析し、それらの先例を個別の事案に適用しなければなりません。これは、成文法とは完全に異なる考え方です。初めの頃は、この新しい方法に慣れることに奮闘しました。
今もなお、財産法のクラスで古い事例について教わったときのことを思い出します。それは狐を追う二人の猟師の論争についてでした。一人の猟師が狐をつかまえようとした直前に、もう一人の猟師が横から入って捕まえてしまった。猟師は二人とも狐は自分のものだと主張する。狐の所有権を主張できるのはどちらか?
私は、現代社会からかけ離れたこんな古い事例に、なぜ教授がそれほど時間を割くのかわかりませんでした。しかし後になって、この有名な事例の学習を通して、事実を分析する方法や、関連する先例を目の前の事実に適用する方法が理解できました。実際2002年に、前年のバリー・ボンズのシーズン本塁打記録となったホームランボールの所有権をめぐる裁判で、この1805年のケースが使われたそうです。